lion_physics’s blog

しがない大学生が勉強した物理を自分なりにまとめています。

【熱力学】エントロピーと体積のアナロジー

こんにちは。らいおんです。 このブログを作った当初は、かっちりきっちり自分の考えたことをまとめて書こうと思っていたのですが、案の定挫折した(しかもその手のモノを書くのならTeXとかでまじめにpdfとして書いた方がやりやすい)ので、もっとラフに考えたことを綴るスタイルにしようと思います。 自戒として超絶半端な解析力学の記事は残しておきます笑 そのうち書くかもしれないですし。

さて、本題です。 今回の話題は熱力学のエントロピーです。

熱力学は、大学に入ったばかりの1年前期の授業で僕は初めて習いました。しかし、初めて習ったときはエントロピーのイメージがさっぱりつかめず、適当に式だけ覚えて試験を乗り切ってしまいました。それ以来、エントロピーってよくわかんねえよなあと思いながらずっと過ごしてきて、割と最近まじめに本を読んだりして少し考えがまとまったので書き連ねてみます。

以下で考える系と諸々の記号の定義

本題に入る前に、簡単にこの記事で考える系がざっくりどんなものかということと、諸々の記号を定義しておきます。

  • 考える系:基本的には、系の持つエネルギーと系の体積を指定すれば、完全に平衡状態が指定できるもの を考えます。まあ要するに、ふつうの気体とかをイメージしてもらえばよいです。

  • 記号 U:系の全エネルギー V:系の全体積 P:系の圧力 T:系の温度 S:系のエントロピー W:系のされた仕事 Q:系の受け取る熱量

体積と圧力、そして仕事

さて、さっそく熱力学に入っていきましょう。 エントロピーについて考察する前に、体積・圧力・仕事について考察します。 まず、系がある状態1から2に移る際に系のされる仕事Wを、PとVをつかって表します。 状態1と状態2が非常に近い状態だとして、微小量で書きましょう。

 d'W = -PdV

それと、熱力学第一法則(エネルギー保存則)も、微小量の形で書いておきましょう。

 dU = d'Q + d'W = d'Q - PdV

これらの式について考察してみます。

 一つ目の式は、エネルギーの移動形態の一つである系の力学的な仕事d'Wは、PとVの変化量dVの積によってあらわされることを意味しています。ここで注目したいのは、Vが示量的な変数であるのに対し、Pが示強的な変数であることです。

 示量的な変数とは、系のスケールを二倍、三倍と大きくすると、それに伴って二倍、三倍と大きくなっていく量を表す変数の事です。体積は確かに、系のスケールに比例して大きくなっていきます。体積のほかには、エネルギーUが示量的な変数として挙げられます。

 一方、示強的な変数とは、系のスケールを大きくしても変化しない量の事です。圧力は確かに、単純に系のスケールを二倍、三倍などとしても、変化することはありません。圧力のほかに示強的な変数としては、温度があげられます。

 一つ目の式は、この示量性の変数と示強性の変数の二つの組み合わせで、仕事という量を表しています。このとき、体積の変化分はそのまま仕事を大きさを決めていますが、圧力は仕事に関してどのような役割を担っているのか、もう少し深く考えてみます。

 そのために、こんな状況を考えてみましょう。気体の詰まった箱があり、その中は左右に(断熱)壁で仕切られているとしましょう。この壁には留め金がついていて、留め金を留めている間は壁は動くことはできませんが、留め金を外せば自由に動けるようになるとしましょう。留め金を止めた状態の箱の両側に、それぞれ適当に気体を入れたとします。さて、留め金を外した時、壁はどちらに動くでしょうか?

 答えは簡単です。左右のうちより圧力の高い気体が入っている部屋から、圧力の低い気体が入っている部屋の方向へ壁は動きます。

 この「壁が動く」ということは、エネルギーが一方から他方へ、仕事という形で動くことを示しています。どれだけのエネルギーが動くかというと、それはまさに上の一番目の式で表されています。しかし、この考察で重要なのは、(壁で仕切られている)二つの系を接触させ、力学的な仕事が互いにできるような状況にしたときに、「どちらの方向に仕事というエネルギーが流れるか」ということは、圧力という示強変数のみによって決まっている、ということです。

 このような関係は、力学的仕事と圧力のみにとどまらず、様々なところで顔をのぞかせます。例えば、熱力学の最後の方(?)で出てくる、化学ポテンシャルとかいうやつはそうです。化学ポテンシャルは一粒子当たりのエネルギーの事ですが、二つの系を粒子のやり取りができる形で接触させたときに、粒子が(そしてエネルギーが)どちらの向きへ流れるかということは、化学ポテンシャルによってのみ決まる(はず)です。この化学ポテンシャルも示強変数です。

 これらの示強変数は、エネルギーの流れる方向を決めると同時に、それと対になっている示量変数の変化量と、実際に移動するエネルギーの比も表しています。上の一番目の式はP,V,Wのまさにそれを表していますし、化学ポテンシャルの場合に対になっているのは粒子数です。

 このように多くの場合(僕は全てだと思っていますが)、エネルギーUの変化量は、エネルギーの流れる方向を決定する示強変数と、それと対になる示量変数の変化量の積で書けます

エントロピーと温度、そして熱

 さて、上の考察の結果をふまえて、熱というエネルギーの移動形態にも同じことを当てはめてみましょう。つまり、熱というエネルギーの移動形態も、力学的な仕事などと同じように、エネルギーの流れる向きを決める示強変数と、それと対になる示量変数で表すことができるのではないか、と考えてみるのです。

 まず、そのような熱に伴う示強変数はなんだろうかと考えてみます。つまり、熱の移動する向きを決めている示強性の変数はなんでしょうか。

 察しのいいひとはもうお分かりの通り、それらしいものとして温度が考えられるでしょう。確かに、熱は温度の高い方から低い方へと流れていきます。熱の流れる向きを決めているのは温度なのです。

 では、温度と対になる示量変数とは一体何でしょうか。これは困ってしまいました。そんなものは、少なくとも私たちの日常生活では思い当たるものはありません。。。しかし、この示量性の変数こそがエントロピーなのです。つまり、上の一番目の式と対応させると次のような関係が想像されます。

d'Q = TdS

 エントロピーは、熱に付随する示量性の量であり、対になる示強変数は温度です。つまり、体積や圧力などと比較すると次のような対応が成りたちます。

W \leftrightarrow P \leftrightarrow V

Q \leftrightarrow T \leftrightarrow S

 このように、仕事・圧力・体積の関係のアナロジーから、熱・温度・エントロピーという関係を想像することができるのではないでしょうか。

 「しかし、エントロピーd'W = PdVなどと違って不等式で書かれていたり、エントロピー増大則とかいうわけのわからんものがあるじゃないか」という人もいるかもしれません。しかし、このうち一つ目の疑問はそもそもエントロピーに特有のモノではなく熱力学一般に言えるある事情が原因であること、そして二つ目の疑問はここで述べた考え方に、ある一つの熱ならではの特殊性を付け加えると、少なくとも直感的には、かなり理解できると思います。それについては次の記事で書こうと思います。

 長くなりましたが今日はこの辺で。読んでくださりありがとうございました。

解析力学 1-1 Newton力学の復習

 \def \def\vector#1{\mbox{\boldmath $#1$}}

このブログで最初に扱うのは、解析力学についてです。なぜかというと、僕が今勉強しているものだからです笑。 このブログのどの記事もそうですが、解析力学の記事も例に漏れず僕なりの考え方を下に解析力学をまとめたものです。もし間違っているところありましたら、コメント等でご指摘いただけると嬉しいです……!

さて、解析力学の内容に本格的に入る前に、まずは基本のNewton力学を簡単に復習しましょう。

Newtonの運動方程式

Newton力学は三つの法則に基づきNewtonによってつくられた、最も古典的な力学である。 特に第二法則と呼ばれる次の法則(運動の法則)は重要である。

運動の法則:物体の運動量の時間変化は、その物体にはたらく力に比例し、その方向は力のはたらく向きに等しい。

これは次のNewtonの運動方程式そのものである。  

\displaystyle m\boldsymbol{\ddot{x}}(t) = \boldsymbol{F}(t)  

もちろん、mは注目している物体(質点)の質量、\boldsymbol{x}(t)はその位置座標ベクトルであり、\boldsymbol{\ddot{x}}(t)はその時間による二階微分、即ち加速度ベクトルである。
Newton力学は基本的に、解きたい問題に合わせてこの運動方程式を立て、それを解くことによって注目する系の時間発展を予言するわけだ。
特に物体に働いている力が保存力である場合、即ちある適当なポテンシャルU(\boldsymbol{x})を用いて、

\displaystyle \boldsymbol{F} = -\nabla U(\boldsymbol{x})

と書けるとき、その質点のエネルギーEは保存する:

\displaystyle E = T + U = \frac{1}{2}m(\boldsymbol{\dot{x}}(t)) ^2 + U(\boldsymbol{x}(t))

ここで、Tは質点の運動エネルギーであり、\boldsymbol{\dot{x}}は質点の速度ベクトルである。

なお、上でも用いたが、このブログでは以降関数の時間微分をドット(・)をつけて表す。

次回は、この運動方程式を別の形で表現することを考える。それが解析力学への入り口である。

ご挨拶

こんにちは。らいおんです。

このブログは、ちょっと物理が好きなしがない大学生が、日々学んだことを吐き出すためのブログです。

物理や数学など、科学について勉強したことを自分なりにまとめてupしていきたいと思います。

基本的に内容は学部1、2年でやるような内容の物理・数学になると思います。最低限、高校数3以上の知識は仮定します。それ以上の内容の知識については、僕の気が向いたらまとめる程度だと思います。

 

このブログ自体、どれくらい続くかどうかわかりません。基本的に僕の気まぐれな更新になると思います。ですが、物理や数学の本を読んだりして、僕なりに「こう考えたらわかりやすいんじゃないか」と思った内容をつらつらと書いていくことになると思います。僕と同じような大学生で、「わかりにくいな」とか「いまいちイメージがつかめない」といったときに、理解の手助けになるような記事が書けたらいいなと思います。

 

これからよろしくお願いします。